Project / Column

【事例】大手卸売企業におけるデータ利活用戦略立案~実行支援

  • 卸売業

Introduction

アポロは、様々なメーカー、流通・小売業界の企業を支援している。
そのなかでも今回は、業界を代表する卸売企業に対する「データ利活用戦略の立案・実行支援プロジェクト」の事例について紹介する。

プロジェクトの背景・課題認識:「卸不要論」に対する挑戦

卸売業界は、大手チェーンストアの台頭以後、メーカーと小売間に卸売企業を介さずとも両者が取引・流通を完結できるようになり、”卸不要論”が囁かれ続けてきた。事実、地方の卸売企業は衰退し、M&A・再編を繰り返しており、事業所数は年々減少の一途をたどっている。

※引用グラフ出所:株式会社帝国データバンク「平成」30年間で最も伸長した業種、IT産業など「広告・調査・情報サービス」

※グラフ出所:経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査 産業別集計(卸売業,小売業)」に基づきアポロ株式会社作成

また、メーカーから大量に仕入れた商品を、加工等の付加価値を加えることなく小売店に納める(=中間の流通業務のみを担うビジネス)という性質上、取扱高に対して利益率が低い業界であることもその特徴だ。
昨今は、メーカーが消費者に対し直接販売を行うD2Cの隆盛や、小売のSPA化等、卸売企業を介さずともメーカーから消費者にモノが届く仕組みが確立されてきている。こうした環境下において卸売企業は、従来の商流・物流における役割に加え、取引関係にあるメーカー・小売に対し新たな付加価値を提供する必要性に迫られている。

今回事例として紹介する企業においても、同様の課題を抱えており、このような状況からの脱却を目指すべくプロジェクトがスタートした。

メーカー・小売に対する新たな付加価値提供を目指した新規ソリューションサービスの企画構想

卸売業(中間の流通業務)のニーズが衰退していくことを前提に、いかにして新たな収益源を獲得するか。このプロジェクトは、卸売業のマーケティング戦略およびソリューションサービスの企画立案からはじまり、その開発から導入、活用支援までを一気通貫で行うという、アポロとしてもチャレンジが求められるものであった。

メーカー・小売間の直接取引の流れの中で、何十年にも渡りメーカーと小売の中間ポジションを守り続けてきた大手卸売企業は、双方との信頼関係が強固であり、膨大な取引先を有している。そして、当然その裏側では膨大な取引データも保有していた。

その信頼関係と膨大なデータに着目し、保持するデータをメーカー・小売のニーズに応える形で提供することができれば、メーカー・小売双方に対する新たな付加価値が提供できるのでは、と考えた。

プロジェクト初期は、クライアントの各メーカー・小売担当者様だけでなく、かなりの数のメーカー・小売企業へのヒアリングを行い、課題を深堀すると同時に、クライアントが保有するデータ資産の棚卸や競合となり得るソリューションサービスの調査を実施した。ヒアリング結果から導出したニーズを、緊急度×重要度、担務による固有ニーズと横断的な共通ニーズ等、様々な軸・フレームワークで整理・構造化した上で、それらのニーズに対し、クライアントのデータ資産を活用することでどんなソリューションサービスが提供できるか、それは競合優位性があるものか、の検討を進めていった。
このソリューションサービス仮説を構築するプロセスでは、社内の有識者メンバにも参画してもらい、「ニーズ」「実現性」「競合優位性」を何度も行ったり来たりしながら、文字通り昼夜議論を重ねた。

検討を進める中で、メーカー・小売企業は、調査会社によるアンケートやPOSデータによってどうにか自社の市場把握に努めている一方、競合動向・商品トレンドといった市場を俯瞰的に捉えるデータを提供するサービサーは極少数である点に着目した。
いちメーカーや小売企業では到底収集できない、中間ポジションに位置する卸売業だからこそ保有できる膨大なデータを活用することで、市場を俯瞰的に捉え、メーカー・小売業務に資するデータを提供する。この観点からソリューションサービスの企画構想を具体化していった。

具体化の過程では、構想実現に向けたロードマップ策定やROI試算だけでなく、実際にソリューション開発後に出力できる帳票イメージまで作成した。イメージとはいえ、メーカー・小売ニーズに即し、具体的な業務活用シーンが想定できるものとすべく、クライアントの現場担当者様も巻き込み、討議を重ねながら作りこんだ。
一連のアウトプットをクライアントと共に企画構想書として取り纏め、経営に上申し、開発の承認が無事に下りた時は、とても強い達成感を抱くとともに、開発に向けてより強い責任を感じた。

企画構想の実現に向け試行を繰り返した開発、そして遂に導入へ

開発フェーズからは、ソリューションサービスのコアとなるモデルを設計・実装するデータサイエンティストメンバにも本格的に参画してもらった。

膨大なデータを保有するとはいうものの、いざそれらを統合し、活用可能な状態に持っていくことは一筋縄ではいかなかった。小売やメーカー毎にカテゴリの分類の仕方も違えば、同じカテゴリのメーカーでもコード体系はバラバラ…それらをいかに統合するか、を検討するだけでも一苦労だった。さらに、統合したデータを利活用するにも取引の強いメーカーや小売の影響で、バイアスがかかったものになってしまえば、誤った結論を導いてしまう恐れもあった。

データのことはデータサイエンティストに任せるのではなく、コンサルタントも一緒になって議論し、コード体系やマスタ整備のあるべき状態を定義したり、これまでの知見を活かしつつ、こうしたデータを活用することでバイアスを除けないか、といったアイデアを出す等することで、ひとつひとつ問題を解決していった。

アイデアをぶつけ、議論し、トライし、改善する。これを相当数繰り返しながら問題をクリアしていくことで、世の中全体のトレンドを追えるようなデータ分析モデルの構築~実装が実現できた。
コンサルタントからは、メーカー・小売企業に提供することを考えると、この粒度までは出力できる状態にしたい、これくらいの精度は担保したい、といった品質水準をデータサイエンティストに要求し、データサイエンティストも熱量と創意工夫をもってそれに応える。
さらっと書いているが、この品質水準をクリアするまでの営みは本当に苦労した…。このモデリングをがんばってくれたデータサイエンティストには感謝しかない。

苦労の甲斐もあり、クライアントからも大変喜んでいただき、実際に開発したソリューションサービスをメーカー・小売企業に対して導入するフェーズでも、コンサルタントとして最高の誉め言葉である「引き続き支援してほしい」という言葉をいただいた。
導入フェーズにおいては、ただ導入企業を増やすのではなく、ソリューションサービスが対応できないメーカー・小売企業からの様々な要望に対しても、クライアント担当者様が応えられる状態を目指す姿と定めた。

多く挙がる要望を類型化・メニュー化し、OJT形式でクライアントと二人三脚でメーカー・小売に対するサービス提供を進める過程で、こういった見せ方をすべき、ここに着目してこんな示唆を出すべき、といったアドバイスを繰り返すことで、徐々に私たちが介在せずとも提供できるメニューが増えている。

アポロの強みとは?

コンサルティング会社、データ分析会社は世の中に数多くある。その中で、なぜアポロがこのような戦略立案からソリューションサービス開発、活用支援まで一気通貫のプロジェクトを推進できたのか、その理由は以下2点にあると考える。

  1. 戦略企画・立案のコンサルティングだけに留まらず、それを実際に実装できる技術(データサイエンス)力を有している点
  2. クライアント先に深く入り込み、クライアント以上にその会社の事業を考えるスタンスに加え、特にマーケティング領域のコンサルティング、データサイエンス経験が豊富な点

コンサルタントとデータサイエンティストが同じ組織内で喧々諤々と議論できる環境にあることで、コンサルタントが定義した目指す姿、戦略、アウトプットの活用イメージ、品質水準が常にデータサイエンティストと共有される状態をつくることができる。このプロジェクトでも、実際にそれを繰り返すうちに、データサイエンティストからもアウトプットの活用方法や品質水準に関する意見・アイデアが活発に出てくるようになった。

また、クライアントの事業に対する理解、メーカー・小売企業のニーズに対する知見を有しているからこそ、定義した目指す姿等に自信を持つことができ、最終的に生み出すアウトプットが ”メーカー・小売にとって価値があるものだ” という確信をもってプロジェクトを進めることができた。

プロジェクトで中心的な役割を担ってくれたデータサイエンティストは後日こう言っていた。
「最終的なゴール・目指す姿を自分事として捉え、強く意識した上でデータ分析モデルを設計・実装することは、ただ依頼を受けた分析案件をこなすこととは達成感も得られる経験値も全く異なった。自分が構築したモデルがメーカー・小売にとって価値あるものと確信した上でプロジェクトを迷いなく進められたことで、スピーディーに品質を担保したアウトプットを行うことができた。これはコンサルティングまたはデータ分析だけを行っている会社にはできないことだと思う。」

アポロにはメーカー、流通・小売業界におけるコンサルティング、データサイエンス経験が豊富なメンバーが複数在籍している。当然、クライアントの業務、その先の課題についてもこれまでの経験から勘所があり、どのようなことを課題として捉え、その解決にはどのようなアプローチが効果的かという知見を有している。

特に、メーカー・小売企業がどのような課題を抱えていて、データをどのように利活用すればいいかという点に着目し、それに対し卸売企業が提供できる新たな価値を創出する。これは卸売業を生業としてきたクライアント独自では完結できないことであり、アポロがバリューを発揮できる領域だ。

コンサルティング×データサイエンスの強みを活かし、戦略~実行まで一気通貫で行える、アポロならではのプロジェクト事例だったと感じている。

総括

アポロはこのプロジェクトにおいて、戦略立案に始まり、データ統合・分析モデルの構築、分析メニュー・帳票策定まで一気通貫でコンサルティングを行ってきた。クライアントと並走しながら、メーカー・小売企業向けに提案できるフェーズに至るまでを約2年で実現した。

このスピード感や品質の高さはクライアントにも評価いただき、まさに卸業界を大きく変える一歩をクライアントとアポロで踏み出すことができたと自負している。

この記事の著者

熊坂 惟

Consulting Unit マネージャー

デロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティング及びアクセンチュアにて、メーカー・流通小売業界をはじめとする様々な業界・企業へのコンサルティングに従事。組織・業務変革、CRM・マーケティング、データ利活用推進、人材育成等、幅広いテーマの支援を経験。
特に、DX・AI/データ活用企画を絡めたマーケティング戦略立案~実行支援を強みとする。

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