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社内データをフル活用していますか?

多くの組織が保有しているデータの価値を理解していないことが多々あります。データ単体ではその意味や価値が見いだせないことが珍しくありませんが、顧客IDなどの共通IDをKeyにデータをつなぐことで、今まで見えなかった様々な洞察が浮かび上がります。顧客が見えなかったことで解決できなかった課題に対し、重要な示唆を獲得できるようになるのです。

データの価値は、その単なる存在自体ではなく、その結びつきや連関にこそ宿るものです。単一のデータポイントは断片的で分かりづらいことがありますが、それを一つのパズルピースとして顧客情報と結びつけることで、全体像が浮かび上がります。たとえば、ある商品の購買履歴を持っているだけでは、顧客の嗜好や購買動機ははっきりしません。しかし、その商品を購入した顧客がどのような他の商品も購入しているのか、その情報を組み合わせることで、その顧客の好みや購買パターンを理解できるのです。

さらに、つないだデータを時系列分析することは、顧客の変化する行動パターンを把握し、トレンドを予測するために非常に重要です。例えば、特定の季節やイベントにおける顧客の行動を分析することで、需要予測を改善し、在庫管理を最適化することが可能です。また、類似顧客をクラスタリングすることは、ターゲットセグメンテーションやパーソナライゼーション戦略の基盤を築くのに役立ちます。同じ特性や購買履歴を持つ顧客をグループ化し、それぞれに合わせたアプローチを検討することで、より効果的なマーケティング戦略を展開できるのです。

データをつなげることができ、起こしたいアクションに対するKeyドライバーが明確になれば、その項目を月次や週次でモニタリングすることができるようになります。これにより、より短期間での対応が可能になり、迅速な意思決定が実現します。事業自体を顧客視点で把握することは、競争の激しいビジネス環境で生き残るために不可欠です。データ活用を通じて、顧客との関係を深め、効果的な戦略を設計するための新たな視点が得られ、競争力を強化する手助けとなります。

今回は社内データの活用事例として、製薬会社の例を挙げます。
購買履歴の活用や需要予測とはまた違った視点でのデータ活用の事例です。データも目的によってさまざまな活用の仕方ができますので、幅広い視点で活用できることを知っていただくことができます。

製薬会社における医師データ活用

製薬会社におけるミッションの一つは、自社の製品(薬)を医師に採用してもらい、患者さんに処方してもらうことです。そのために、MRによるコミュニケーションやメール、製品説明のWebなどの自社メディア、3rd Partyメディアによるアプローチなどを駆使し、製品理解や自社エンゲージメントを高め、制約につなげる必要があります。しかしながら、どのメディアでアプローチすることがどのような意味を持つのか、各アプローチ間の関係性はあるのか、ないのか、そもそも効果があるのかすら明らかになっていないこともあります。その理由の一つに、各コミュニケーションを担う部門がいくつも跨っていること、それ故、データがつながっていないことが起因しています。これは、製薬会社に限った話ではないと思います。我々は、まず散らばったデータをつなぎ、医師(顧客)の理解を深めることから始めました。

データをつないでわかる課題と価値

まずは社内のデータについて調査することから始めます。ただし、よくあることとして、担当の方に話を伺うと、「社内には使えるデータはあまりないので、有益な示唆は得られないと思う」というような話を聞くことがあります。これは、自部門のデータ単体で見た場合の話であり、部門を跨ぎ、社内で保有しているデータに目を向けた場合、その限りではありません。

医師IDを軸にしてあらゆるデータを探索してもらいます。医師のデモグラフィック系データ、MR訪問履歴、自社チャネルでのアプローチ履歴(メール配信、開封、メール内URLクリックなど)、3rd Party配信履歴、売上額、処方数など、さまざまなデータを集めます。それらのデータを一つずつつなげてみることで、どのような種類のデータが医師全量に対して充足率が低いのか、データの型がそろっていないため使いにくいのか、など、分析の前に様々な課題が見えてきます。これらの課題を見つけることが、非常に重要な第一歩なのです。多くの場合、データ加工で対応できますが、難しい場合は予測処理などを行い、欠損データを埋めることもでき、データを分析できる状態に引き上げることが可能です。

特徴クラスタリングによる医師理解

今までは医師の年齢や出身大学、担当診療科、それに加えてMRの印象などの情報から、医師それぞれの理解を深めていました。ただし、この方法ではデータがない医師については、その特徴がわからないことや、データが存在していても、医師の好みや嗜好性を把握することが難しいです。そこで、各チャネルへの反応データやMRの訪問可否データなど、医師のアクションに関連するデータも組み合わせ、クラスター分析を行うことで、医師を分類し、理解を深めることができるようになります。

例えば、偏差値の高い都心部の大学出身で、学術志向性の強い3rd Partyメディアへの反応が強いクラスターに属している医師の特徴を見つけることができれば、MRのコミュニケーションの内容や提示コンテンツをそれに合わせることで、顧客エンゲージメントを向上させることが期待できます。

医師のチャネルプリファレンス

医師IDに対して、各種データを結びつけることができたことにより、医師の特徴を探ることができるようになりましたが、その次の段階として、それらの情報を時系列で分析することがあります。医師が製品を採用する際、事前にどのようなチャネルに反応していたのか、どの順番のコミュニケーションが効果的だったのか、というゴールデンルートを明らかにできます。

これにより、チャネルの好みや最適なアプローチを特定し、最適なプロモーションコストの配分が可能になります。データを統合し、医師(顧客)を理解することで、プロモーションの最適な投資を追求し、ROIを最大化する可能性が秘められています。

今回ご紹介した事例は製薬業界における事例でした。データをつなぎ、顧客の特徴を明らかにし、プロモーション計画を最適化するという取り組みは、他の業界でも応用が利く基本的なアカウントマネジメントにおけるデータ活用なのです。

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