project

株式会社両備システムズ 様について

【事例】逆V字アプローチによるレガシーシステムの再構築と、AIエージェント導入による次世代開発プロセス構築プロジェクト

  • 地方公共団体
  • IT・システム開発

MEMBER

株式会社両備システムズ  様

ヘルスケアソリューションカンパニー テクノロジー推進室 室長 尾﨑 知彦 氏
ヘルスケアソリューションカンパニー テクノロジー推進室 スペシャリスト柴垣 誠矢 氏

アポロ株式会社

AI Division AIUnit 生成AI部門 リード シニアマネージャー 後藤 優征
AI Division AIUnit 生成AI部門 プリンシパル 伊志嶺 朝輝

プロジェクトサマリー

背景

  • 自治体システム標準化への対応とコスト削減の両立
    • 国が主導する地方公共団体の情報システム標準化の期限が迫る中、国は2018年度比で運用経費を30%削減するという高い目標を掲げています。この目標を達成するためにシステムのモダン化に着手。Web化後、20年以上の歴史を持つ健康管理システムの大幅な刷新において、限られた納期・コスト・リソースの中で、従来の「手作業による開発プロセス」を抜本的に変革することが急務となっていました。

課題

  • コアロジックの属人化
    • 長年の改修を経てシステムが大規模・複雑化し、コア部分の仕様が特定の担当者にしか分からない「ブラックボックス化」が発生。影響範囲の調査に多大な時間を要していました。
  • 不具合の悪循環
    • 既存システムは、熟練エンジニアの手作業に頼る開発においても、微細なミスから不具合の連鎖が発生。その対応がさらなる工数を圧迫し、品質とスケジュールの維持に多くのコストを費やしていました。

成果

  • AI伴走支援による「逆V字アプローチ」の実装
    • AI駆動開発への転換
      • 汎用ツールの導入ではなく、アポロをパートナーとした伴走支援型の開発体制を構築。既存のソースコードから各種設計書を自動生成する「逆V字アプローチ」を採用し、既存資産を最大限に活かしたAI駆動による開発プロセスを確立させました。
    • ドキュメントのMarkdown化および業務標準化
      • 本件の検証結果を分析し、以降のシステム開発においては、AIが解釈しやすいようExcel仕様書をMarkdown形式へ移行。特定のAIツールに依存しない柔軟な開発基盤を構築し、開発スピードの大幅な向上とノウハウの形式知化を実現しました。このことにより、属人化や不具合の悪循環を止めるための仕組みを整備しました。

「属人化」と「限界を迎えた手作業開発」が変革の出発点に

インタビュアー:アポロ 渡邊(以下、渡邊):
現在アポロとともに取り組んでいるシステムのモダン化について、背景や経緯を教えていただけますか。

株式会社両備システムズ 尾﨑氏(以下、尾﨑):
私たちが手がけているのは、地方公共団体向けの健康管理システムです。現在、国が主導して地方公共団体の情報システム標準化を推進しており、その期限が迫っていました。それに加えて、国は標準化前と比べて運用経費の2018年度比30%削減という目標を掲げています。その目標を達成するためにはシステムのモダン化が必要ですが、現行システムのアーキテクチャを刷新する必要があります。限られた納期・コスト・リソースの中で開発プロセスを抜本的に変えることが不可欠だと判断したのが、今回の取り組みの出発点です。

渡邊:
具体的に、どのような課題を最も重く感じていましたか。

尾﨑:
大きく2つあります。1つ目は、不具合の連鎖です。私たちの健康管理システムは最新バージョンが『V8』で、Webブラウザ化した『V6』から数えると約20年の歴史があります。その間にシステムは大規模化し、熟練エンジニアが細心の注意を払いながら開発してきましたが、それでもわずかなミスや抜け漏れで不具合が発生することがありました。タイトなスケジュールの中で不具合が起きると、それへの対応で既存の作業も圧迫され、さらにミスが生まれる、そういった悪循環が発生していました。これから開発する後継システムでは、この課題を解決する必要がありました。
2つ目が、コアロジックの属人化です。歴史が長い分、システムの核心部分を知っている人材がどんどん減ってきていました。『なぜこの処理があるのか』『この機能はどこに影響するのか』が特定の担当者にしか分からない状態で、その方に負荷が集中してしまい、影響範囲の調査だけでも相当な時間がかかっていました。

「汎用AIツール」でも「パッケージ製品」でもない、「伴走支援」という選択

渡邊:
AI活用に向けて検討を始めたのは、どのような経緯でしたか。

尾﨑:
開発プロセスを抜本的に改革したいと考えたのがきっかけです。お客様に高品質で価値の高いシステムを、より低コストかつスピーディーに提供したいと考えたとき、「すべてを人の手で行うプロセスにはすでに限界がきている」と感じていました。
そのような経緯から情報収集をはじめ、2024年の秋頃に東京で開催された展示会に参加しました。当時は今ほどコーディングエージェントが一般的ではなく、GitHub CopilotなどのAI補助ツールがようやく注目され始めた時期です。そこでさまざまな企業のブースを回り、セミナーも受講しながら比較検討を進めました。

渡邊:
さまざまな選択肢を検討された中で、アポロを選んでいただいた決め手はどこにあったのでしょうか。

尾﨑:
まず、汎用的なAIサービスは早い段階で候補から外しました。ツールを導入するだけでは根本的な課題は解決しません。過去にさまざまなツールを導入したものの、結局現場で使いこなせなかった経験があったため、今回も同じことの繰り返しになるだろうと判断しました。
次に、開発特化型のAIツールも除外しました。私たちが扱っているのは歴史が長く使用言語も古いシステムであるため、ツール側が対応していなかったこと、またパッケージ製品としての提供が主で、私たちに合わせた柔軟な対応が難しかったことが理由です。
最終的に求めていたのは、私たちの課題にしっかりと向き合い、ゼロから一緒に仕組みを構築してくれる伴走支援型のパートナーでした。そこから3社に絞って比較検討したのですが、アポロさんを選んだ理由は大きく3つあります。
1つ目は、ヒアリングの段階から私たちの課題を深く理解し、寄り添っていただけたこと。
2つ目は、ご提案内容が変に取り繕っておらず、現実路線で具体的だったため、私だけでなく検討メンバー全員が明確なゴールイメージを持てたこと。そして3つ目は、いきなり大規模な契約を結ぶのではなく、フェーズを細かく刻みながら着実に信頼を積み上げていくご提案をいただいたことです。
実は、検討した3社のうち1社は過去にお取引があった企業でしたが、アポロさんを含む残り2社は全くお取引のない状況でした。
正直に申し上げると、金額的にはアポロさんが一番高かったんですけどね(笑)。

アポロ後藤(以下、後藤):
そうでしたね。まずは1ヶ月のアセスメントからスタートさせていただきました。

逆V字アプローチで進める、コードとドキュメントの整備

渡邊:
次にプロジェクトの進め方について教えてください。どのような順序で進んできましたか。

後藤:
アセスメントの後、私たちがご提案したのは『逆V字アプローチ』です。通常のウォーターフォール開発は要件定義→設計→実装という順ですが、既存システムに対しては逆に、コードから詳細設計書を自動生成し、次に基本設計を人間の判断を交えながら整理するという進め方をしました。20年分の資産を整理しながら、AIが読み取りやすい形に変換していくイメージです。

アポロ伊志嶺(以下、伊志嶺):
途中で使用するツールも変わりましたね。最初はClineを使っていましたが、現在はCursorを中心に使っています。この1年でコーディングエージェントの世界は大きく変わりました。特定のツールに縛られず、常にその時点で最も優れたものを使っていく姿勢は、プロジェクトの設計思想として最初から意識していました。

尾﨑:
そこが、私たちとしても非常にありがたいところです。ツールが変わっても、業務のMarkdown化という基盤があれば、どのAIエージェントにも渡せる。そういった柔軟性を持った設計になっているので、時代の変化に追随しやすい構造になっていると感じています。

AI駆動開発が変えた「スピード感」と「仕事の文化」

渡邊:
プロジェクトを通じて、特に大きな変化として感じていることはどんなことでしょうか。

株式会社両備システムズ 柴垣氏(以下、柴垣):
1番大きいのは、LLMを使った開発のスピード感を体感できたことです。これまでずっと人の手で全部作業することが当たり前でしたから、コーディングエージェントに作業を委ねるとここまで早く物ができるのかという驚きがありました。これが今後のスタンダードになるんだという感覚を、実際に経験として得られたことは非常に大きかったです。
もう1つ、業務ドキュメントのMarkdown化も大きな変化です。私たちはずっとExcelで仕様書を作ってきました。ただ、LLMにインプットとして渡す際にExcelは向かないということを、このプロジェクトを通じて理解しました。今では私が口うるさいぐらいにいろんなメンバーへMarkdown化を推進していますが、Markdownで書けば他にも色々なことに使えるという発想が社内でも広がりつつあります。

伊志嶺:
Markdownへの移行は、特定のツールに縛られないという観点でも重要です。ExcelはAIに読ませると解釈ミスも起きやすい。一方でMarkdownは、どのコーディングエージェントでも扱いやすい。そういった意味で、業務の書き方そのものを変えていくことが、AI駆動開発への入口になります。

尾﨑:
まさにそう思います。私たちのこの取り組みが今、社内でかなり注目を集めていて、他のカンパニーから『どうやってるの?教えて』という声がどんどん出てきています。AI駆動開発を横展開したいというニーズが社内で高まっていることは、1つの成果だと感じています。

今後の展望

渡邊:
今後の展望について教えてください。

尾﨑:
まず、私たちは次期システム開発の本格稼働に向けて、プロセスや指標の整備を進めています。そして、健康管理システムだけでなく、他のプロダクトへもこのAI駆動開発の基盤を横展開できる仕組みにしたいと最初から考えていました。実際に今、同じ標準化の文脈で別のプロダクトも刷新の動きに入っており、私たちのプロジェクトで培ったノウハウを活かせると思っています。成功事例をしっかり作り上げて、全社に展開していきたいですね。

伊志嶺:
当初からプロジェクトをスケールできる形で設計してきたので、健康管理システムで構築した基盤が他のプロダクトにも流用できる状態になっています。両備様の取り組みは、コーディングエージェントの世界が急速に変化する中でも常に最善を追いかけてきた、類を見ないプロジェクトだと思っています。

同じ課題を持つ企業へのメッセージ

渡邊:
最後に、同じような課題を持つ企業の方へメッセージをいただけますか。

尾﨑:
私がいろんなパートナー企業さんや同業の方と話すと、AIを使った開発に取り組んでいるところはまだ少なく、せいぜいチャットツールを使っている程度というのが実情です。でも、世の中的にはAI駆動開発がもうベースになりつつあると感じています。今やらないでいると、気づいたときには取り残されてしまう。大事なのは、怖がらずにまずは小さく始めることです。AIに触れながら、知識とガバナンスを少しずつ積み上げていく。私たちもそこから始めました。自社でゼロから育てようとすると時間がかかりすぎるので、知識のある外部のパートナーと組むことも有効な選択肢だと思います。

 

株式会社両備システムズ 様について

https://www.ryobi.co.jp/

株式会社両備システムズ様は、岡山県に本拠を置き、公共・社会保障・民間企業など幅広い分野で先進的なITソリューションを展開する独立系SIerです。 特に同社が提供する健康管理システムは、全国の地方公共団体(以下、自治体)においてシェアNo1を誇り、生涯を通じた健康情報を一元管理し、自治体の保健活動を効果的に推進する、日本の地域保健を支える極めて重要な基幹ソリューションとして高く評価されています。

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