project

静岡市 経済局 商工部 産業振興課 経営支援係 様

【事例】“DXって何?”から始まった中小企業支援 ― 静岡市が選んだ「伴走型」DX支援と、その先の課題

  • 地方公共団体
  • 教育事業

MEMBER

静岡市 経済局 商工部 産業振興課 経営支援係 様

係長 和田 昌之 様
主査 原田 翼 様

アポロ株式会社

AI Division / AI Unit シニアマネージャー 粟飯原 隆司
Business Division / Consulting Unit コンサルタント 青野 晃尚
インタビュアー :Marketing Division / マネージャー 山﨑 龍一

プロジェクトサマリー

背景

  • 急変する事業環境と、投資に踏み切れない中小企業
    • 気候変動や経済変動など企業を取り巻く環境が急激に不安定化するなか、事業変革(DX)はあらゆる業界で最優先の取組事項に。知識・ノウハウの不足を理由に投資へ踏み切れない中小企業が多い。
  • 現場の効率化ニーズと、活用できる財源 
    • 少ない人員でも今いるスタッフで業務を回せる体制をつくりたいという効率化のニーズ、国の補助金など財源面での後押しもあり、静岡市(経済局商工部産業振興課)は令和6年度に「中小企業等DX支援業務」を公募型プロポーザルで実施することとした。

課題

  • 「DX」という言葉自体への心理的ハードル
    • 中小企業側の意識は「DXが何なのか分からない」という段階からのスタート。初年度の募集では「DX」という名称への抵抗感から、狙った水準の応募が思うように集まらなかった。

成果

  • 「自社で何ができるか」のイメージ形成
    • 実際にツールを使い始めるところまで進んだ企業が1〜2社。参加企業は「自社で何ができるか」のイメージを持てるようになった。
  • 3事業体制への拡大
    • 生成AI・AI活用への関心の高まりを追い風に、今では、データ活用・プロセス改善をテーマにした2つの伴走支援事業と生成AIの活用に向けた研修事業に拡大している。

募集要項

出典:「中小企業等DX支援業務 公募型プロポーザル実施要領」「同 仕様書」(静岡市経済局商工部産業振興課、令和6年6月28日付)

業務名 令和6年度 経商産振委第13号 中小企業等DX支援業務
委託者 静岡市 経済局 商工部 産業振興課
目的 知識・ノウハウ不足で投資に踏み切れない市内中小企業のDXに向けた事業活動を支援する
業務内容 ① 全体マネジメント
② セミナー開催(静岡商工会議所と連携)
③ 企業の募集・選定(セミナー参加者から10者以上を選定)
④ 伴走型成長支援プログラム(初回対面必須、以降最低3回現地訪問)
⑤ 機器導入等補助金申請支援(補助率3分の2・上限30万円)
⑥ 事例集作成(地域への事例共有)
⑦ 報告書作成
対象企業の要件 ・静岡商工会議所と連携して開催するセミナーに参加していること
・市内に主たる事業所を有する中小企業
・明確な経営理念・成長意欲がある
・DXが自社の成長要因となる
・市内DX推進のロールモデルとなることが期待できる

急変する事業環境のなかで、DXに踏み切れない中小企業

インタビュアー:アポロ 山﨑(以下、山﨑):
静岡市さんが中小企業向けにDX伴走支援を実施することになった背景を教えてください。

静岡市 和田 氏(以下、和田):
気候変動や経済変動など、企業を取り巻く環境が急激に不安定化しているなかで、事業変革はどの業界でも最優先の取組事項になっています。その解決策としてDXが考えられますが、知識やノウハウの不足から投資に踏み切れない中小企業が多いというのが実感でした。少ない人員でも今いるスタッフで業務を回せる体制をつくりたいという効率化のニーズ、国の補助金など財源面での後押しもあり、事業化を検討しました。

中小企業の場合、大きな企業のように専門部署があるわけではないので、「DXについて自社でどうしたらいいのか分からない」という声、人材の問題、お金の問題は、今も当時もありました。補助金による支援だけでなく、実装まで支援することが必要であったのだと思います。支援を受けた企業が「こういう形でうまくいった」という事例を他の企業にも広げていくことで、成功事例を市の中で積み重ねていく。そういう意味でも、この形の支援は有効だと考えています。

山﨑:
中小企業の皆さんの反応はいかがでしたか。

和田:
最初は、「DX」という言葉自体をそもそも理解できていない、という状況でした。そういう前提を踏まえたアプローチをしないと、伴走支援の募集をかけても企業からの反応がほとんどなかった、ということもありました。
募集の際に「DX」という名前では1社か2社くらいしか集まらず、事業の名称を「DX」ではなく「業務効率化」に変更するなどの工夫をしました。当時の担当者が直接企業に声をかけたりもしました。

アポロ 青野(以下、青野):
確か当時はDXという名前では人が集まらなかったので、「効率化」というワードで集めるようにした、という経緯がありましたよね。

和田:
そうですね。現在では生成AIの活用が広がってきたこともあり、この言葉への抵抗が薄れてきた感触もありますが、単にデジタル技術を使うということだけでなく、これまでの管理体制そのものを変えていく、というイメージが徐々に浸透してきているのではないかと思います。

「伴走支援」という選定理由

山﨑:
数ある提案の中からアポロを選んでいただいた決め手を教えてください。

静岡市 原田 氏(以下、原田):
募集要領の基準にきちんと則った上で、一番成果が出そうだと感じたのが貴社の提案の内容でした。市として求めているもの、つまり伴走支援によってしっかり定着してもらうという支援の中身を、提案内容として評価させていただきました。

公募には複数社からの応募があり、静岡の地元企業からの応募はありませんでした。地元企業からの応募があれば、という思いはありましたが、成果が出そうな提案を選ぶのが一番という考え方で選定しています。令和8年度は、データ活用・プロセス改善をそれぞれテーマにした2つの伴走支援事業と、生成AIの活用に向けた研修事業を行っています。

実施と、見えてきた次の課題

山﨑:
研修を通じて、どのような成果がありましたか。

和田:
実際にツールを使い始めるところまで進められた企業は、1、2社くらいでした。DX検定などにかなり時間がかかってしまい、各企業もそこまで時間を確保できない、というところがありました。ただ、「これぐらい作業時間が軽減できそうだ」というイメージは持てるようになっていて、ある程度目処が立ちやすくなっているのかなとは思っています。
10社に対して見立てた効果は、伴走支援を受けて「自分たちでもこういうことができそうだ」「これぐらい効率化できそうだ」という理解を得られた、という声はいただいています。

生成AIへの追い風と、3事業体制への広がり

山﨑:
これが、今年度の生成AI活用促進の研修と、2つのDX伴走支援の3事業に増えた背景にもつながっているんでしょうか。

和田:
そうですね。自分たちの会社の課題に対する考え方や使い方を覚えてもらう研修・伴走支援という形になっていて、これまでのDXでどう効率化しようか、というところが、AIを使うことでより効率化できることが分かるようになる。AIの使い方ももっと簡単にできるようになる、というところが得られるようになる、ということですね。

アポロ 粟飯原:
DX伴走支援とAI研修の役割分担・住み分けのようなものはあるんですか。

和田:
正直なところ、そこは必ずしも連携が取れているわけではないです。ただ、市の別の事業としてDX化に向けた相談窓口を設置しており、そこで諸々の質問を幅広く受け付けていただけるような形になっています。生成AIへの関心が高まっている追い風があり、興味のある企業が活用できる事業にしていきたいと考えていますし、必要な支援策を検討していきます。

他自治体へのメッセージ

山﨑:
同じようにDXに悩む他の自治体の方へ、メッセージをお願いします。

和田:
支援を受けた企業がきちんと必要な支援を受けられる仕組み、そこにつなげられたらいいなと思っています。支援が必要な企業に支援が届き、それが循環して市の経済発展につながっていく―それが一番理想だと思います。

企業を選ぶ基準は、企業規模よりも「変えたい」という意欲と、課題がどれだけ明確かを重視しています。研修は「勉強」だと難しく思われがちですが、本気度と成果がどれくらい見込めそうかを見て選定しています。まずは成功事例を増やしていく。それが今の私たちの方針です。

 

静岡市 経済局 商工部 産業振興課 経営支援係 様

https://www.city.shizuoka.lg.jp/

「企業の振興」を掲げ、市内中小企業を対象とした経営支援策を幅広く展開する部署。国の支援策・財源なども活用しながら、静岡市の経済をどのように発展させていくかという視点で、DX推進をはじめとする様々な支援メニューを企画・提供している。市内中小企業全体が抱える課題の解決を目指しているのが特徴。

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